トランプ時代は戦争を生み出すだろうか?

2016年は、アメリカ主導のグローバリズムが崩壊した一年でした。

ドゥテルテ大統領の麻薬関係者粛清、イギリスのEU離脱、ロシア主導によるシリア体制派のアレッポ奪還、アメリカのトランプ大統領就任。

世界が明らかにナショナリズムに傾いていくのを目の当たりにして、周囲に聞くと多くの人が「ヒトラーのような独裁の世界になるのが怖い」「また世界大戦が起こるのか」と、世相に不安を抱いていました。

ふつうに日常を暮らしているほとんどの人は、ふだんから積極的に世界情勢を調べたりはしていません。

そういう人達にとって、世界は突然ひどく粗野で乱暴で、自分のことしか考えないようになってきたように思えることでしょう。

しかし、わたしたちは本当にまた、第一次、第二次世界大戦と同じような、独裁と戦争の世の中を繰り返すのでしょうか。

問題を整理してみたいと思います。

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望み、行動することで豊かになってきた人間社会

よくも悪くも、人間はそうかんたんに進化しないものです。

西暦が始まって2000年余で、人間はどれくらい心身が進化したでしょうか。

もし2000年前に生まれた赤ん坊を現代で育て、教育を受けさせたら……。

その子はふつうに言葉を話し、文字を書き、スマホやパソコンを使うようになり、わたしたちとまったく同じように育つはずです。

では、人間というフォーマットが変わらないのに、2000年前の人間と、現代の人間の生活の豊かさが違うのはなぜなのでしょう。

それは端的に言えば、国家や団体のレベルでみれば戦争の絶えない世の中であっても、人間全体でみれば、便利で平和で暮らしやすい社会になるよう望み、そのように行動したからです。

戦争のない世の中や、まんべんなく幸福が世界中にいきわたる世の中にするのはまだまだ先のことですが(わたしたちが生きている間には実現しないでしょう)、遅々たる歩みではあっても、人間はそうなるように行動しています。

わたしたちの暮らしを豊かにしてきた社会革命

教科書みたいな話で申し訳ないんですけど、人間社会では歴史上何度か、それまでの生活のあり方を根本的にひっくり返してしまうような革命が起こっています。

まず、15000年ほど前に起こったとされる、狩猟や採集で命をつないできた原始社会から、農耕によって食料を得るようになったことで起こった新石器革命。

これによって、人々は土地を移動せず定住するようになり、食糧生産が安定しました。

新石器革命によって、18世紀に産業革命が起こるまでのわたしたちの社会は、主に農業によって支えられることになります。

産業革命では、石炭をエネルギーとした画期的な輸送ができるようになったことで、あらゆる産業が一気に世界規模で流通するようになり、これまでの農業社会に工業社会が肩を並べることになりました。

そして、今度は2000年代前後に、情報革命が起こります。

インターネットやコンピュータを利用した情報技術の飛躍的進化によって、世界中の人やモノが迅速に情報を交換し合えるようになり、あらゆる社会活動が情報技術を活用するようになりました。

これによって、情報技術が農業や工業と比肩しうるだけの産業になったのです。

情報革命が、戦争の形を変えつつある

情報革命がもたらしたのは、チャットを楽しむことや、インターネットで買い物をする、といったことだけではありません。

ロビー活動とよばれる政治活動が情報革命によって一気に活発化します。

これまで自国の主張を押し通して他国のあり方を変えるためには武力に頼るしかなかったのですが、IT化したロビー活動が選択肢を広げつつあります。

2016年、米大統領選挙においてトランプ氏が勝利するように、ロシアがサイバー攻撃を仕掛けていたという分析結果をCIAがまとめたのは記憶に新しいところですが、こういった水面下での戦いも、情報革命によってもたらされたものです。

約75年周期でのパラダイムシフト

パラダイムシフトとは、その時代に常識だと考えられていた認識や思想や価値観などが革命的、劇的に変化することをさします。

日本においては、明治維新、そして太平洋戦争の終焉が、近代史におけるパラダイムシフトと考えられます。

そして今年を世界的なパラダイムシフトの中にあるととらえた場合、およそ75年周期で流れが変わっていることがわかります。

日本においても、今後憲法九条が改憲されるということになれば、日本の戦後が終わったというくさびが打たれることとなります。

これが意味することは、世界の常識はいったん変わってしまえば、これまでは人間の一生にあたるほどの期間、新しい常識の時代が続いてきたということ。

もうひとつは、今まさに世界の常識が変化しつつあるということです。

次のパラダイムシフトまで

多くの人が自覚していると思うのですが、世界的なナショナリズムの流れは、もはやよほどのことがない限り、逆行することはないでしょう。

ロシアが裏で糸を引いていたかどうかは、この際関係ありません。

問題は、大きな流れが変わったということであり、仮に非常に単純に、グローバリズムが平和を目指していた、ナショナリズムがファシズムを生み出し戦争を引き起こす、という考え方を引き継ぐなら、今後世界の緊張感は高まるとも考えられます。

しかし、人間社会が豊かになり、情報革命以降の社会であることを考えれば、世界が1945年以前の戦前回帰に向かうとは思えません。

また、アメリカ主導のグローバリズムがいったん崩壊したからといって、これまで積み上げてきたグローバリズムの理念や理想が跡形もなくなったわけでもありません。

結局、これから世界がどのように動くにしても、先ほど述べたように、わたしたちは後世に向けて、人間が便利で平和で暮らしやすい社会になるよう望み、そう行動しているということを忘れるわけにはいきませんし、そこにこそ希望があると思います。

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