電通石井直社長 辞任の意向を表明 政治とマスメディアの関係性の変化

電通の新入社員だった高橋まつりさんの過労自殺を発端とした長時間労働問題ですが、これを巡って厚生労働省東京労働局が当時の上司と電通を書類送検した28日、石井直社長が辞任の意向を表明しました。

メディア記事

http://www.sankei.com/economy/news/161228/ecn1612280031-n1.html

産経新聞では電通会見の詳報を伝えています。

石井社長は会見で、「新入社員の過重労働を阻止できなかったことは慚愧(ざんき)に堪えない。高橋まつりさんのご冥福をお祈りし、皆さまにおわびする」などと、トップとして初めて謝罪した。

さらに、社員一人一人が会社の成長の原動力であり、成長のために時間を際限なく増やすことを是とする風土になっていたと述べ、

 しかし、人の時間は無限ではない。この当たり前の事実を刻み、働き方を見直していく。経営における優先順位を見直し、一人一人が健康に、多様な働き方を通じて自己の成長を図れることが最重要だと、強く認識している。そうした労働環境を実現していくことをお約束する。

と今後の取り組みの見通しを語っています。

またその後、自殺の原因がパワハラとの指摘を否定できないが、不法行為に該当する行為は認められなかったとし、遺族への直接の謝罪と当局の処分と書類送検が行われたことから辞任を決意した、と述べています。

電通会見詳報2

電通会見詳報3

電通会見詳報4

電通会見詳報5


http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL28HU9_Y6A221C1000000/

日経新聞では、副社長が社員の労働改善について述べた言葉を取り上げています。

中本副社長は「依然として特定の部署や社員に業務負荷がかかる状況が続いている」との認識を示した上で、労働時間の管理徹底などを通じ「長時間労働の撲滅に向け全力で労働改革に取り組む」と強調した。


http://mainichi.jp/articles/20161229/k00/00m/040/097000c

毎日新聞では、これを広告業界全体の問題ととらえるような一文も。

石井社長は陳謝し、再発防止への決意を口にしたが、役員ら上層部への労働局の捜査は来年も続く。広告業界トップ企業の動揺は収まらない。

電通と政治、斜陽

http://lite-ra.com/2016/06/post-2370.html

この記事によると、

この国内最大手の広告代理店は、これまでも自民党の選挙広報のほとんどを担い、日本の政治に深くコミットしてきた。

とあり、オリンピックでのプレゼンの「おもてなし」や、原発の「アンダーコントロール」といったプレゼンを考えているのも、すべて電通だと指摘。

舛添都知事の後に電通が乙武洋匡氏を据える予定だったという話までしています。

そのうえで、

 電通の企業理念は〈人へ、社会へ、新たな変化をもたらすイノベーションをつくっていく〉というものだ(電通公式ホームページ「企業理念」より)。しかし、電通がつくりだす「変化」は、実のところ“公権力の意向”に沿ったものであることを、私たちは意識すべきだろう。

と述べています。

それにしても、日本の情報産業を牛耳ってきたといってもいい電通が、なぜここで社長が辞任するにまで至ることになったのか。

なぜ今回の問題を抑え込むことができなかったのか。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50138

こちらでは、まず電通の労災問題での文書を紹介し、それがいかにも電通が被害者であるような書き方であることを指摘。

”当局とメディアが「NO」を突きつけてきたから、伝統的な働き方を変えざるを得ない。逆に言えば、これまでは長時間労働体質も社として見過ごしてきたと認める文面”として電通の体質を批判しています。

そのうえで、今回のスキャンダルに抑えがきかないことを”かつてない異変”と表現。

電通の絶大な権力を紹介したうえで、

実はここ数年はそんな電通の権勢にも陰りが出てきたと関係者たちは口を揃える。

と、状況が変わってきたことを指摘しています。

電通が上場以来リスクをおそれて小粒な仕事ばかりするようになり、かつての得体の知れない恐ろしさが消えたとし、

電通の「稼ぎ場」であるテレビが視聴者から飽きられるようになって、テレビ広告市場も縮小。電通が’09年3月期決算で106年ぶりの最終赤字に落ちる中、追い打ちをかけるようにインターネット市場が急激に膨張して猛威を振るい出した。

と、斜陽の憂き目にあう中で、今回の違法長時間労働問題が噴出したのを”象徴的”と表現しています。


http://blogos.com/article/152053/?p=1

この記事では、自民党がメディア戦略をどう磨いていったのかを、アメリカの事例などを交えながら詳しく紹介し、そのうえで今、官邸のメディア戦略をマスメディアが分析できなくなってきていると指摘。

”メディアの政治監視機能も機能不全を起こしている”ことを問題視し、

既存マスメディアが気付かないうちにメディア環境がすっかりかわってしまうのだとしたら、そこで新しい政治を読み解く言説が提供される必要があるでしょう。

と述べています。


今回の長時間労働問題による社長の辞任は、単なる働き方改革の一環という状況を越えて、政治とマスメディアの関係性が変化していくことの象徴であり、日本の「第4の権力」の構造が大きく変わりつつあることを示唆しているように感じました。

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